激しく降り続いた雨も、
午後から少し明るくなってきて
いつものように福と病院に出かけました。
病室に入ると・・
目を閉じてラジオを聞いていた。
G20を終え、急きょ韓国に行ったトランプさんが
丁度、南北軍事境界線を越え、板門店に入るところを
実況放送していた。
「トランプさんて目立ちたがり屋? アピール上手? 選挙のため?」
「そんなに簡単に北へ行けるなら・・シンガポールだの ベトナムだの・・て」
「なんだったの・・・」
トランプさんの話が終わったかと思ったら・・
自分がトイレに行く時、ベットから起き上がるまでの
手順やら工夫したことを自慢げに話す。
そして・・
「あれは・・ちゃんとやってる・・」
「これは・・あれは・・」 と
自分が病人であることを忘れて
口だけで、あれやこれや・・と
世話してくれる。
やっと一通り話し終えると
ため息をついた。
今日、予約なしの外人さんが来たこと・・
その外人さん達に、精一杯の振る舞い方を
福ちゃんがしてくれたことを話した。
「今日福ちゃん連れてきた・・・?」
「福ちゃんが見たい!」
今から一緒に1階の玄関まで降りるという。
先ほど話してくれた
ベッドから起き上がりトイレに行く方法を
また話しながら実践し起き上がり
気持ちは福に向かっている。
車に戻り
車を夜間玄関に向けた・・
福が何かを感じ取っている・・
助役さんがマスクを外し
そのマスクを大きく降りながら
「フク~ フク~」と呼んでいる。
それに気づいた福・・
窓から落ちんばかりに身をのりだした。
そして千切れんばかりに尻尾を振っている。
一声 「クウン~」
そして、いつもより高い声で
二声 「ワン! ワン!・・」 と吠えた。
走りだした車のウインドウガラスが少しぼやけたてにじんだ。
駅長!